転職の成功例から考えるそれぞれの"働き方"

業界・業種を問わず、たくさんの人と関われる仕事は総じて一種の面白さがあると思います。

人材派遣会社には、毎日たくさんの人が登録に訪れます。その理由は実に様々なのですが、私が勤めていた派遣会社で特に多かったのは、結婚や出産、そして子育てなどのライフイベントを機に、正社員で働くことには一旦終止符を打ち、派遣社員として再スタートしたいという女性でした。

アルバイトやパートでの勤務を選択する方々も多いと思いますが、それまで正社員という立場で積み重ねてきたスキルや経験、それらをしっかりと活かし、給与という形で反映させて生活の足しにしたい、若しくは自身のお小遣いにしたいという方にとっては、ぴったりな雇用形態だったようです。

私がコーディネーターとして勤務していた派遣会社で出会ったAさんは、それまで営業職の正社員として勤めていた会社を寿退社し、コールセンターでの業務や一般企業での事務職を希望して登録されました。

Aさん曰く、元いた会社では営業職ということもあり、定時後や休日に緊急の電話がかかってきたり、日々の業務の中でも自分の仕事を勤務時間内に終えた後も担当外の業務を振られてしまったりと、自身の仕事量をコントロールする権利が与えられておらず、結局は上司から許可が出るまで退勤できないなど、日々膨大な残業時間を積み重ねていたようでした。それでも彼女は、その分給料は良かったし営業としてのやりがいも感じていたそうで、できることなら働き続けたいと話していました。しかし今後の結婚生活を考えると、やはりもう少し落ち着いた仕事で、たとえ収入が落ちたとしても残業無く働ける職場環境を希望されました。

それから数週間、Aさんとの面談やヒアリング、そしていくつかの職場見学を経て、彼女派遣先は大手企業のコールセンターに決まりました。当初、Aさんの希望する時給など待遇面でのハードルが決して低くないことから、良い派遣先が見つかるかは五分五分と感じていたのですが、営業職時代に培ったPCスキルや電話対応力などのコミュニケーション能力が評価され、通常よりも高い給与設定で受け入れて頂けることが決まったのです。

更に数週間後、働き始めてからのAさんに、職場の状況や環境、そして勤務についての困りごとがないかを聞いてみました。するとAさんは、とても明るい声で、色々なことを話してくれました。まず、定時という決められた時間で退勤できることに感動したそうです。他から見れば当たり前のことかもしれませんが、そういった環境に身を置けなかったAさんからすると、トラブルさえなければ毎日定時で帰れる環境は非常に有難いものだと感じたようです。

また仕事量についても、他の派遣社員とほぼ均等に振り分けられており、無理をすることもなければ、逆に暇だと思うこともなく、とてもバランスの良い働き方が出来ていると話していました。加えて、業務に対する責任の度合いについても聞いて見たのですが、派遣社員ということもあって、何か問題が起きても正社員の方や管理職の方が助けてくださり、自身で重大な局面に対する判断を下さなければならないということもなくなって、とても心が軽くなったそうです。

このAさんとのやり取りを通じて、私は働き方に対する様々な考え方を知ることになりました。一般的な話をすれば、大きな会社で正社員として働き、夏と冬にはボーナスをもらえるという安定した環境に身を置くことは“良いこと”なのでしょう。私も大いに同意できる部分がありますし、否定しようとは思いません。どんな働き方を選んだとしても、それはすべて個人の自由です。

しかし、そういった安定と引き換えに、自身の時間をはじめとする“かけがえのない何か”を差し出さねばならないとしたらどうでしょう。

Aさんのケースですと、営業という仕事にやりがいを感じつつも退職という道を選びました。その1番の理由は結婚というライフイベントだったのですが、もし元の職場が、残業も少なく、上司からの理不尽な指示もない働きやすさのある環境であれば、彼女はきっと別職種への転職などせず、営業としてのやりがいはそのままに、結婚後も元の職場で働き続けることを選べたかもしれません。しかし現実は違い、Aさんは退職することを選びました。

その結果、幸いにも転職は成功し、彼女は満足のいく働き方を見つけることができました。しかし、本来であればこのような選択やコスト、そして苦労も必要なかったのかもしれません。どんな企業であれ、売上や利益と等しく、そこで働く社員のことも考えるべきだと思うのですが、残念ながらそれはまだまだ難しいようです。

様々な働き方が存在する昨今。どんな方法を選ぶかは個人の自由です。これから働き方を決める、もしくは新たな働き方を選ぼうとしているのであれば、是非固定概念にとらわれず、より広い視野を持ってご自身の働き方という“これから”について、考えてみてはいかがでしょうか?

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

投稿者プロフィール

コトツムギ広報

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA